Blog 本居宣長研究 「大和心とは」 : 『直毘霊』を読む・七
或人、舜は堯が國をうばひ、禹も又舜が國を奪へりしなりといへるも、さも有べきことぞ。後世の王莽曹操がたぐひも、うはべはゆづりを受て嗣(つぎ)つれども、實は簒(うば)へるを以(もっ)て思へば、舜禹などもさぞありけむを、上代は樸(ぼく)にして、禪(ゆづ)れりと云(いい)なせるを、まことゝ心得て、國内(くぬち)の人ども、みなあざむかれにけらし。
かの莽操がころは、世人さかしくて、あざむかれざりし故に、惡きしわざのあらはれけむ。かれらが如くなる輩も、上代ならましかば、あはれ聖人と仰がれなましものを。